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日別アーカイブ: 2026年10月1日

頑丈に作ればいい、ではない。大道具の「ちょうどいい」の決め方

こんにちは、Flapjackの岩崎です。

昔、尊敬する先輩から言われて、今でも覚えている言葉があります。

「そんなもんでいいよ」

当時の自分は、一生懸命バリバリ仕込みをしていました。

少しでも綺麗に。
少しでもちゃんと。
もっとやった方がいいんじゃないか。

そんな気持ちで仕事をしていたときに言われた一言でした。

普通に聞けば「そのくらいでいい」という言葉ですが、そのときの自分はなぜか心が救われました。

今思えば、自分では**「どこまでやれば十分なのか」が分からなかった**んだと思います。

桟は、多ければ多いほど良い?

例えば平台を作るとします。

中の桟を増やせば、当然強くなります。

でも増やせば材料費がかかり、重くなり、切る・組む・ビスを打つといった製作時間も増えます。

だから考えるのは、

「何本入れれば一番頑丈か」ではなく、
「この平台には何本必要なのか」

ということです。

人が乗るのか。
何日使うのか。
一度きりなのか、何度も転用するのか。
運搬は多いのか。

条件が変われば、「ちょうどいい」も変わります。

見えないところを、どこまでやる?

仕上がりも同じです。

客席から絶対に見えない裏側に、少し気になるところがある。

5分で直せるなら直す。

では30分なら?

同じ物が10台あって、全部やれば5時間かかるとしたら?

しかも、強度にも安全にも施工にも影響しない。

それでも直すことが「丁寧な仕事」なのか。
それとも、どこかから「自己満足」になるのか。

ここに明確な答えはないと思います。

大事なのは、何でも手をかけることではなく、

「なぜ、ここには手をかけるのか」

を考えることなのかもしれません。

安全に関わるところなら、当然やる。
必要な補強なら入れる。

でも「念のため」で何でも足していけば、物は重くなり、材料も時間も増えていきます。

必要なところにはしっかり手をかける。
必要以上のことは、あえてやらない。

これは手抜きとは違うと思います。

「ちょうどいい」は妥協ではない

「ちょうどいい」と聞くと、少し中途半端な言葉に聞こえるかもしれません。

でも、自分が考える「ちょうどいい」は少し違います。

安全性。
強度。
見た目。
重量。
材料費。
製作時間。
運搬性。
施工性。

いろいろな条件を考えた上で、

「今回の仕事なら、どこまでやるのが一番良いのか」

を決めることです。

強度だけなら、もっと強くできる。
見た目だけなら、もっと綺麗にできる。
コストだけなら、もっと安くできる。

でも実際の仕事では、一つだけを最大にすればいいわけではありません。

だから、

「最高の物を作る」より、
「ちょうどいい物を作る」方が難しい。

そんなこともあると思います。

「そんなもんでいいよ」

今なら、昔先輩に言われた言葉の意味が少し分かる気がします。

「そんなもんでいいよ」

適当でいいという意味ではなく、

「この仕事に必要なのは、そこまでだよ」

ということだったのかもしれません。

早く作れるようになることも経験。
綺麗に作れるようになることも経験。

でも、

「どこまでやるべきか」を判断できるようになることも、経験だと思います。

やろうと思えば、もっとできる。

それでも必要がなければやらない。
逆に、必要なら普段以上にやる。

「できること」が増えるだけではなく、
「やるべきこと」を選べるようになる。

それも、職人として経験を積むということなのかもしれません。

そして今、自分が後輩に、

「そんなもんでいいよ」

と言うときが来たら。

昔、自分がその言葉に救われたように、
「適当でいい」という意味ではなく、

「そこまでちゃんと考えて作ったなら、それで十分だよ」

そんな意味で言える先輩でありたいと思います。